2014年5月 阪急電鉄への質問状送付とその回答

2014年5月、当会の会員が、阪急電鉄のHPに記載されている女性専用車両についてのQ&Aについて疑問を感じ、阪急電鉄に質問状を送付しました。

以下、質問状を送付した会員からの報告です。


阪急電鉄に質問状

女性専用車両のQ&Aは疑問だらけ

次のURLは、阪急電鉄のHPのうち、女性専用車両についてのQ&Aです。

http://www.hankyu.co.jp/faq/7/(アーカイブ)

非常に疑問なことがたくさん書いてあります。

そこで私は同社に質問の手紙を送ったのですが、その回答が届きましたので報告いたします。

質問状に添えた資料

まず、以下に示すのは、質問状とともに阪急に送付した別添資料(別添1・2)です。

質問状本文で、その内容についての記述が出てくるので、先にお読みください。

(阪急のHP内にある、Q&Aに記載されている内容です)

(別添1)

(Q) 女性専用車両の導入について教えてください。

(A) 阪急電鉄では、「人にやさしい、魅力ある鉄道サービス」の実現を目指して、京都本線の平日ダイヤ運行日の終日、2人掛けシートのある特急・通勤特急(注)に女性専用車両(大阪側から5両目)を設定しています。

土・日・祝日や年末年始、ゴールデンウィーク、お盆期間中などの土曜・休日ダイヤ運行日には設定していません。

(注)ロングシート車両には設定していませんので、ご了承ください

(別添2)

(Q) 男性が女性専用車両に乗車できる場合はありますか。

(A) 目の不自由なお客様は女性専用車両にご乗車になれます。

また、女性のお客様にご同伴の小学6年生以下の男性のお子様、お体の不自由なお客様と介護者のどちらかが女性の場合に同伴される男性も女性専用車両にご乗車になれます。

なお、緊急事態が発生した場合や、特に混雑して危険な場合は、女性専用車両の設定を解除いたします。

【別添資料1】について

女性専用車両は当初、痴漢対策という名目で導入され、今も多くの人が「痴漢対策」と認識していると思われますが、導入後、痴漢件数が目立って減らなかった(路線によっては逆に増えた)ために、多くの鉄道事業者が、自社での痴漢件数のデータを隠匿しはじめたことや、関西の路線でよく見られる、全く混雑しない昼間なども含めた完全終日実施など、おかしな点が多数指摘されるようになりました。

そのためか、今ではストレートに「痴漢対策」と言わず、(この阪急のQ&Aもそうですが)、「人にやさしい、魅力ある鉄道づくりの一環として・・・」というような類の言い方をする鉄道事業者が増えてきました。

そこで今回、女性専用車両を「人にやさしい魅力的ある鉄道サービス」と言う阪急に対し、

  • 「人にやさしい」という、「人」というのは女性客のことのみを指すのか、男性客も含めたすべての人を指すのか?
  • 「男性客も含めて」というなら、女性専用車両が男性にどう「やさしい」のか?
  • 女性専用車両の導入目的は「痴漢対策」だと聞いているが、阪急の場合は「痴漢対策」ではないと認識してよいのか?

を質問してみました。

【別添資料2】について

女性専用車両は、女性「専用」と称しながら、実際は根拠となる法令や約款が存在しない、「任意協力」の車両に過ぎず、男性であっても実は「誰でも乗れる」ということを、国土交通省はもとより、JRや東急電鉄などにも確認していますが、阪急はどうなのか?

そして、もし阪急も任意協力であるなら、なぜ、「女性のお客様にご同伴の小学6年生以下の男性のお子様、お体の不自由なお客様と介護者のどちらかが女性の場合に同伴される男性も女性専用車両にご乗車になれます」などと、「男性は”例外”を除き乗車禁止」と人に思わせるような案内をするのか?

そして、そのようなことをするのは、「消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること」を、「事業者の責務」として定めた、「消費者基本法第5条第2号」の責務を果たしていないことになるのでは? ということで、

  • 阪急の女性専用車両は「男性が乗車できない車両」なのか、もしそうなら根拠となる法令や約款は存在するのか?
  • もし、男性が乗れない車両ではない(任意協力である)のなら、なぜ男性は例外的にしか乗れないかのような、事実に反する記載をしたのか?
  • また、そのようなことをすることは、「消費者基本法第5条2号」の責務を果たしていないことになり非常に問題だと思うが、阪急はどう考えているのか?

などを質問しました。

阪急に送付した質問状

阪急に送付した質問状について、その内容をここで公開します。

前略

阪急電鉄株式会社 女性専用車両担当部署 御中  

突然のお手紙、失礼いたします。御社ホームページのうち、女性専用車両についてのページ(別添1及び別添2)を拝見したところ、いくつか重大な疑問が生じましたので、お訊ねすべくお手紙する次第です。

まず、別添1についてです。
 女性専用車両の導入趣旨として、「人にやさしい、魅力ある鉄道サービス」とあります。しかしながら女性専用車両というのは、趣旨はともかく、特定の車両を「女性専用」とし、男性をその車両に乗らないでいただくというものです。一部の女性にとっては快適で魅力的なのでしょうが、私もそうですが、乗客の半数強を占める男性にとっては、乗らないでくださいと言われる車両が一両でき、遠慮なく乗車できる車両が一両減るのであって、全く快適でも魅力的でもありません。痴漢冤罪がなくなるという勘違いをしている人がたまにいますが、女性乗客が女性専用車両以外にも乗車できる以上、男性が痴漢冤罪から逃れることはできません。


質問1
 御社がいう「人にやさしい」の「人」というのは、女性乗客のみを指すのか、男性乗客をも含むのか、どちらでしょうか?また、男性乗客も含まれるならば、女性専用車両はどのような点において男性乗客に「やさしい」のでしょうか?


 質問2
 関東・関西の複数の鉄道会社に問い合わせたところ、女性専用車両の設置趣旨は「迷惑行為(痴漢行為)の防止」であるとの回答を得ましたが、御社の設置趣旨はこれとは異なるという理解でよろしいでしょうか?


次に別添2についてです。
 男性が女性専用車両に乗車できる場合について答えとして、女性が同伴する子供や女性の介助者たる男性、介助者が女性である男性障がい者が挙げられています。しかしながら、私が国土交通省や複数の鉄道会社(東急・JR東日本・JR西日本ほか)及び弁護士に問い合わせた結果では、現在運用している女性専用車両は法令または契約に基づくものではなく、あくまでも(募金等と同じ)任意のお願いに過ぎず、男性も、すなわち誰でも乗車できるということでした(雑誌「プレジデント」などにも同趣旨の報道あり)。  また、消費者基本法(昭和四十三年五月三十日法律第七十八号)の第5条には「事業者の責務」が定められ、その第2号には「消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること」が挙げられています。


質問3 御社の運用している「女性専用車両」は、JR東日本・西日本や東急電鉄のそれと違い、男性が一般に乗車できない、法令または契約に基づく女性専用車両なのでしょうか?もし基づくものであれば、根拠となる法令または契約の内容をなす約款等をご提示ください。


質問4  御社の「女性専用車両」が法令または契約に基づくものでないならば、男性も含めて誰でも乗車できるということになりますが、なぜ男性の乗車できる場合をかなり例外的な人に限定する、事実に反する記載をしたのですか?


質問5
 別添2で子供や介助者が挙げられていますが、仮にこれらが単なる例示であって他の男性が乗車できないという趣旨ではないとします。しかしあの文章を見た人は一般に、子供や介助者でない限り男性は女性専用車両には乗れないのだと誤解してしまいます。一方、自分がどの車両に乗車できてどの車両に乗車できないかということは、「消費者」にとって「必要な情報」です。すると御社は必要な情報を正しく提供せず、自らのHP記載によりかえって誤解を与えているのですから、消費者基本法第5条第2号の責務を果たしていないことになり、非常に問題だと思いますが、いかがでしょうか?


質問6
同じく、仮にこれらが単なる例示であって他の男性が乗車できないという趣旨ではないとします。ではなぜ、御社は誰でも乗車できるのにわざわざ子供や介助者のような例外的な人を例として挙げているのでしょうか。


質問7
 同じく、仮にこれらが単なる例示であって他の男性が乗車できないという趣旨ではないとします。しかし多くの人がそのようには解釈せず、男性は例外的な人を除き乗車できないと誤解されるのは御社としても本意ではないと思います。そこで、そのような例外的な人の例示をやめ、男性でも誰でも乗車できる旨を回答内容としていただき、世間に正確な情報を伝えていただきたいですが、そのようにHP記載を改めていただけますか?ちなみに、大阪市交通局HPには、小学校6年生以下のお子さま、身体の不自由なお客さまとその介護者の方等をはじめ、男性のお客さまもご乗車されることがあります」「女性専用車両については、女性のお客さま及び男性のお客さまのどちらにも旅客運送契約上の義務が発生するものではなく、任意のご協力のもとに行っているものであり、強制力を帯びない」との記述があります。


質問は以上となります。
返信用の切手を同封いたしましたので、ご回答のほどよろしくお願いいたします。
なお、文章のどの部分がどの質問への回答か分からないと困りますので、お手数ですが、回答は必ず質問ごとに分かち書きして記載されるようお願いいたします。

平成26年5月6日   草々

阪急電鉄からの回答

阪急電鉄からは、次のとおり回答が返ってきました。

(阪急電鉄からの回答)

●●様

 平素は阪急電鉄をご利用いただきまして、ありがとうございます。

 このたび、●●様より頂戴いたしましたご質問につきましてご回答させていただきますが、弊社の女性専用車両の考え方や取り組みについて適切にお伝えできるよう、誠に勝手ながらまとめさせていただいての回答とさせていただきます。また、●●様よりいただいております個別の質問について、回答に該当する箇所がないものにつきましては、回答を差し控えさせていただいているものとご理解いただきますようお願い申し上げます。

 女性専用車両は、国土交通省の「男女共同参画社会へ向けての女性の社会進出を支える環境づくり」の一環として提案され、弊社といたしましても、女性のお客様に対する痴漢等の迷惑行為防止に有意義であり、「人にやさしい、魅力ある鉄道サービス」の提供の一助となる施策であると判断したことから導入しております。

 また女性専用車両には、男性が乗車できない法的な強制力はなく、あくまで「男性のお客様のご協力の上運用しております。ホームページの表記につきましても、少しでもご協力いただけるよう現在の表記としております。

貴意に絶えない回答で誠に申し訳ございませんが、何卒、事情ご賢察の上ご理解賜りますようお願い申し上げます。

2014年5月21日

阪急電鉄株式会社

運輸部

以下に、感じた点などを記します。

1.文書の責任の所在が不明確

組織が出す文書であっても、通常はその組織の責任者等、当該文書について責任を負う者の氏名を記載するのが一般です。

私は何度も男性差別を行っている企業等に手紙を出してきましたが、全て肩書と氏名が記されていました。

しかし今回の回答は「阪急電鉄株式会社 運輸部」としか書かれていません。

これでは、誰が文書について責任を負うのか分かりませんし、内容について問い合わせる上でも「部」という大きな単位しか書かれていないため不便です。

私は氏名を名乗って手紙を出したのですから、失礼でさえあります。

2.自社の都合に合わせた体裁、都合の悪い質問は無視

私は各質問への個別回答を明確に求めたのですが、阪急の回答は「誠に勝手ながらまとめさせていただいての回答となります」としたうえ「回答に該当する箇所がないものにつきましては、回答を差し控えさせていただいているものとご理解いただきますようお願い申し上げます」 としています。

自社がHPで掲載している内容についての質問を受けた以上、相手の質問に沿って回答すべきことは当然です。

しかし阪急は私ではなく自社の都合に合わせた体裁で回答をよこしました。

しかも、都合の悪い質問には答えない(実際、男性にとってどう「優しい」のかや、消費者基本法についての質問に、全く答えていない)というわけです。

このようなふざけたことを堂々と書いてきた会社は、阪急が初めてです。

3.人→女性の巧妙なすり替え
議論でしばしばみられるインチキの一つに、すり替えがあります。

この回答でも「女性のお客様に対する痴漢等の迷惑行為防止」が、「人にやさしい」にすりかわっていることが明らかです。

4. 男性を騙していることを公然と述べている

女性専用車両に乗車できる女性以外の人として、例外的な男性を列挙してあることについて回答は「少しでもご協力いただけるよう」にとしています。

しかし女性専用車両には誰でも乗車できるという真実があまり知られていないのですから、これは要するに「少しでも男性のお客様に自分は乗車できないと誤信していただいて」 ということであり、ぶっちゃけ「(自分たちは乗れないと)男性乗客を騙して男性が女性専用車両に乗らないようにしているんだよ」 ということです。言語道断です。

協力して欲しいのであれば、誰でも乗車できるという真実をまず述べて、そのうえで趣旨を丁寧に説明して協力をお願いするべきことは言うまでもありません。

5.法令の順守よりも、自社の勝手な方針を優先

私は、消費者基本法という法令の条文を具体的に引用し、女性専用車両に誰でも乗車できるということを乗客に伝えることが、法令上の「責務」であることを指摘しました。

これに対し阪急電鉄は、男性の乗車できる場合が例外的な場合しかないかのような記載を「少しでもご協力いただけるよう」 と正当化しています。

つまり、法令の順守よりも、男性を(できる限り)女性専用車両に乗せないという、「自社が勝手に決めた方針」を優先しているのです。

女性専用車両が、ウソで塗り固められたデタラメな代物であることを、改めて認識させる回答でした。

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